スタディサークルは、スウェーデンで採用されている学習方法です。 「学習」といえば先生が多数の生徒を教えるというイメージが強いと思いますが、スタディサークルでは参加者それぞれが民主的に相互的に学び合います。 Tominagaさんは20歳の時にスウェーデンに移住。 現地の大学で国際関係学を学び、スタディサークルのリーダーとして精力的に取り組んでこられました。 2019年に日本に戻ってきてからは、NGOで働きながら、「スタディサークル広め隊」として活動されています。 今回はTominagaさんにスタディサークルが私達に何をもたらすのかをインタビューしてきました。
日本でもスタディサークルは必要なのでしょうか?
日本に帰ってきて感じたのは「人々が仕事をしている中で、苦しんでいるように見える」ということでした。
日本では生き方に関する情報が、あまりに少ないように感じます。
「人生」にはもっと沢山の「選択肢」があるのに、それを知るための場が少ないように感じるのです。
同じ会社・学校という同一のコミュニティーにいると、新しい情報を得ることは困難で、その世界の価値観や世界観が当たり前となってしまいます。
生き方に関する選択肢が少ないことが、閉塞感に繋がり、苦しみの原因になっているのではないかと思います。
スタディサークルは、様々な世代・職業の人が集う、バックグランドが異なる人とのコミュニケーションの場です。
そこではそれぞれの人が持っている「経験値」や「情報」の交換が行われます。
今まで知らなかったような「こんな生き方ができるんだ!」とか「こういう考え方もありかも!」という様なことに気が付くことで、日々感じている違和感や苦しみの解決策が見つかる可能性があります。
普段出会わないような人と接し、その人の生き方を知ることで、「人生のオプションが増える」というイメージがしっくりくるかと思います。
一歩外に出て多種多様な価値観に出会い、まずはその違和感に気がついてほしいな、と思います。
日本とスウェーデンの教育の違いはどこにありますか?
日本では「勉強=苦しみ」のイメージが強いように感じます。
知らず知らずのうちに、学ぶ目的を「良い大学に入って、良い会社に就職するため」と捉えている人が多いのではないでしょうか。
これは「生き方を一つに絞ってしまっている」ように思います。
人それぞれ個性や得意なことが違うのに、本当にたった一つの生き方に絞ってしまっていいのでしょうか。
人によって学ぶペースには差があり、興味の対象も異なります。
「競争しなくてもいい環境」・「人より上でも下でもなく、みんなが対等な関係でいられる環境」で学ぶことはとても大切だと思います。
スウェーデンのある成人教育では、成績の優劣をつけずに修了証のみ発行します。
私にとっては「人を成績でジャッジしない」という方針が心地よく感じられました。
10代の頃は学校が苦手な私でしたが、スウェーデンの教育方針に触れ、学ぶことが大好きになりました。
例えば、私は日本に居た時は数学が嫌いでしたが、スウェーデンで初めて数学の面白さが判りました。
それは「公式を覚えなくて良い」、「電卓を使って良い」など、考え方を理解することが大事にされていたからです。
既にやらなければいけないことが決められていて、自由がない場では、自発的に学びを得ることは難しい様に感じます。
また、スタディサークルのリーダーとして関わる中で、スタディサークルは私に「リーダー自身も学ぶ立場であること」、「人はどのポジションにいても、何歳であっても、常に成長過程であり、学ぶ姿勢を忘れてはいけない」ということを教えてくれました。
今では仕事と勉強、常に並行して行っています。
そうすることで、知識もアップデートできますし、先生との対話や他の生徒との交流なども楽しめ、気持ち的にもリフレッシュできます。
海外生活では他にどのようなことを学ばれましたか?
私はキューバに半年ほど留学していたことがあるのですが、その時にたくさんのインスピレーションを得ました。
キューバでは生活レベルに差が付かないよう統一されており、裕福な人はあまりいないような印象を受けました。
しかし、キューバの人々はお金をたくさん持っている訳ではないのに、とても楽しそうに暮らしていました。
その理由の一つが、経済的に苦しい時は「助け合う」ということが、当然の様になされていたからだと感じました。
2世帯・3世帯同居している人々も多数います。
無理にひとりで経済的に自立しなくても、家族同士で助け合うことで「自分達でセーフティーネットを作りあげる」ことができることを学びました。
人は無理に自立しようとすることで、周囲の人との助けあいの関係性が少なくなり、人との繋がりが減ってしまい、結果的に「孤立」してしまうこともあります。
キューバは物質的には豊かではないかもしれませんが、人と人との温かなつながりや笑顔、そしてダンスや歌を楽しむ精神がありました。
これから取り組んでいきたいことを教えてください。
30代になって、死ぬまでに何を残したいかを考えるようになった時に、残したいものの一つはスタディーサークルかなと思いました。
日本では「学ぶのは仕事の為」という考え方が強いと感じます。
一方、スウェーデンでは「学ぶ」と「生きる」がつながっています。
自分の知っている世界が大きくなると、「一歩外に出る勇気」を得たり、さらには「自分の人生を広げてくれる可能性」のようなものも同時に大きくなってくるような感覚があります。
それが「学ぶ」ということなのかもしれません。
私の目標は「国際的なスタディサークルを開講したい!」です。
多種多様な人が参加してくれたら、お互いの価値観や、時には閉鎖的な考え方さえもアップデートでき、より良い社会を築いていけそうな気がします。
それが時には国と国との架け橋にもなれるかもしれません。
私個人的には「社会全体の幸せ」を目指すことが、幸せな人が増えることだと感じていて、「社会全体の幸せ」とはどのようなことなのか、ぜひ皆さんとスタディサークルを通して一緒に考えていきたいなと思います。
NPO法人スノック所属。大阪府枚方市在住の40代。
趣味はタッチラグビー・野菜作り・北欧の照明
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