「私たちはどんな社会を作りたいのでしょうか」 松浦・デ・ビスカルド篤子さん

新しい生き方インタビュー

今回は長年にわたり難民支援に携わってきた松浦・デ・ビスカルド篤子さんと山田直保子さんにお話を伺いました。

彼女たちが運営するのは、在留資格のない外国人らのシェルター。シナピスホーム。

社会活動センター「シナピス」が、元修道院の建物を借り受け、外国人向けのシェルターとして運営しています。

シナピスホームの1階では、地域の人々が集うカフェが営まれています。

シナピスカフェでのインタビューの様子

どのような経緯で難民支援にたずさわるようになったのですか?

私たちの活動は、カトリック教会の社会活動の一環として行っています。

どこに助けを求めて良いのか分からない難民の人々は、カトリック教会の十字架を見て駆け込んでこられます。

カトリック大阪大司教区 社会活動センター シナピス

最初は難民の方に対して私たちが何ができるのか分からず「他に行くところはないですか?」とお伝えしたところ、「あなたが私たちを助けてください」という様に言われました。

その後、少しずつ日本の難民制度を勉強し、理解を深めてきました。

今では、アフガニスタン、イラン、スリランカ、ミャンマー、アフリカ諸国、ナイジェリア、スーダン、ウガンダ、コンゴ、南アフリカと、沢山の国籍の方が私たちのところに訪れます。

なぜカフェを運営されているのですか?

シナピスカフェでは、難民の方にボランティアでカフェのお手伝いをして頂いています。

カフェでボランティア活動をする難民の方は、仮放免の人が多く、賃金をもらいながら働くことができません。

仮放免とは:「非正規滞在」となった外国人に、入管収容施設の外での生活を認める制度。「仮放免者」の就労は現在認められていない

働きたいと思っても働けないのは、人間としてとても辛いことで、気持ちが落ち込みがちになります。

カフェは、難民の方の「何かの役に立ちたい」という気持ちに応える場所であり、他者から「ありがとう」と言葉をかけてもらうことで、存在意義を感じることができるのだと思います。

入国管理局では、自国に帰るように促されますが、ここでは排除されることなく、人々から必要とされます。

また難民の方と高齢者の方との触れ合いは、お互いに良い影響があります。

カフェに来られる近所のお爺ちゃんは、最初は難民の事には興味がなく、ただ近所のカフェに遊びにこられたという感じでした。

ある日、ふとその人の手首を見ると「私は難民を守る」という象徴のリストバンドをつけておられました。

難民の方と直接触れ合うことで、難民問題が「他人ごと」ではなく、「自分ごと」になったのだと感じました。

また、ご高齢の方の中には、自分の事をお払い箱だと感じている人もおり、生きがいを失っている場合があります。

難民の方は「高齢者を敬う」気持ちが強く、高齢者の方が難民の方と触れ合うことで、生きがいが生まれることがあります。

お互いが必要とされるパートナーになっているのだと感じます。

難民の現状を語るミャンマーの方

難民に対する日本政府の対応についてどう感じていますか?

「難民申請は認めない」というのが、日本政府の姿勢だと感じています。

日本は難民条約を批准しており、難民受け入れの義務がある国です。

しかし日本の難民認定割合はとても低く、95%は認定されません。

難民認定申請の手続きについても、その姿勢が表れていると感じています。

難民認定申請には「難民であることを客観的に証明」できる書類を提出する必要があり、それは膨大な書類量となります。

一方、難民条約を批准している他国では、本人の証言から客観的に判断して、難民認定を決定しています。

難民の方は、着のみ着のままで祖国から逃げてきます。

政治的な理由で迫害されていた場合、党員証明などを保有していると逃亡時に危険なため、普通は所持しませんよね。

また、暴行を受けた写真や、怪我の診断書なども、通常は所持していない方が多いです。

日本では、客観的な資料を準備できなければ、本人の証言だけでは証明できないということになる。

難民の方々は携帯電話も没収された中で、自分で立証しなさいと言われます。

他国においても、難民受け入れにより様々な課題が生まれているのが現状です。

ただ、地球全体として一緒に問題解決に向かうことが大切だと思っています。

難民受け入れは、平和への道。

その道に私たちも貢献しないといけないと感じます。

「難民受け入れを、なぜそこまで厳しくするのか」という点について、市民を交えた十分な議論をすべきです。

政治は生活そのものですが、日本では政治を語ってはいけないという雰囲気がある様に感じます。

日本人も、いつか難民になることがあるかもしれない。

南海トラフ大地震が予想されていますが、原発事故が発生してしまうと、私たちが難民となる可能性は一気に高まると思います。

あまりに酷い状況になったら人は助けあう。それが本来の人のすがたです。

誰かが殺されそうになったら、その人を助けるというのが当たりまえ。

「私たちがどんな社会を作りたいのか」

「今のままの社会で本当に良いのか」

私たちそれぞれが考えなければならない課題だと思います。

また、日本人は「人権とは何か?」ということについて、本当に学んできたのかと感じる時があります。

国際基準に則った人権感覚を、私たちは理解できているのでしょうか。

難民の方に、日本の感想を聞いてみたことがあります。

日本は人権大国だと想像してきたのに、実際は期待を裏切られたという声を聞きました。

人権とは、議論の余地なく人が守られる権利です。

私たちの活動は、日本政府が相手なので、暗く長いトンネルにいる様に感じます。

難民に関わるということは、その人の人生にがっつりと携わるということです。

難民支援をしていると、入国管理局の職員から「あなたが身元保証になれるのか?」と質問される場合があります。

身元保証人になるということは、「私個人」が身分を保証するということになります。

今までに100人近くの身元保証人になりました。

私自身の家族構成を聴取され、保証金の納付も求められます。

ただ、目の前で困っておられる難民の方を、そのままにしておくことはできないですよね。

どうして難民支援を続けるのですか?

難民の方は、自分達の苦しみを、私たち支援者にぶつけることがあります。

私たちは制度にも叩かれ、難民の方からもバッシングを受け、サンドバック状態になります。

難民の方が捕まる瞬間に、立ち会うことも多々あります。

強制送還の為に空港まで見送ったり、不遇のうちに亡くなる方もいらっしゃいます。

難民支援の成功率は、とても低いと言わざるを得ません。

以前、イランの難民の方に「僕たちにとって日本社会は暗闇。ただシナピスは、僕たちにとっては弱い弱い灯だった。だから皆さんシナピスの火が途絶えないように、薪をくべ続けて欲しい」と言って頂きました。

また、「酷い国だったけど、あなたに会えてよかったよ」という言葉をもらったこともあります。

何のために難民の支援を続けるのか。

それは「人間とは何か」ということを、考えることに繋がると思っています。

難民支援を通じて、私たちは「助けあいの楽しいネットワーク」に入り、人の為に何かをした時の「あー嬉しいわ」という気持ちを感じているのだと思います。

また難民支援を通じて、「自分自身が変えられていく」ということも感じます。

難民の方と議論になった際に、むかっとした時もあります。

ただそういった苦しみや怒りを乗り越えて、他者との違いを認めながら、どうにか折り合いをつけて、頭を打ちながら前に進んでいかないといけないのだと感じています。

「違いこそエネルギー」だと思います。

多種多様な人が集り、摩擦が起こることで豊かさが生まれます。

カトリック大阪大司教区 社会活動センター シナピス
https://sinapis.osaka.catholic.jp

大阪市中央区玉造2-24-22
TEL:06-6942-1784 / FAX:06-6920-2203

2-24-22 Tamatsukuri, Chuo-ku, Osaka 540-0004 Japan
TEL : +81-6-6942-1784 / FAX : +81-6-6920-2203

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カトリック大阪大司教区 社会活動センター シナピス

シナピスホーム 
大阪市生野区中川6丁目6-23
TEL:080-8940-8847

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