訪問美容師 佐藤みちこさん

新しい生き方インタビュー

14年間の美容室勤務の後、女性専用の訪問美容室をスタートした佐藤みちこさん。
美容へのバイタリティーは溢れんばかり!
過去の辛い思い出を糧に、今羽ばたいておられます。

プロフィール

奈良県出身。短大卒業後に日本酒メーカーに就職。
美容師になる夢をどうしても諦めきれず、OLを辞めて美容師養成の専門学校へ。
卒業後は美容室3店舗での勤務を経験。
出産後、仕事と育児によるストレスで体調不良となり退職するも、現在は枚方を本拠地に訪問美容室を開業し活躍されています。

今まで仕事で苦労したことはどんなことですか?

最初に働いた美容室はとても技術力が高い美容室で、朝7時から夜12時過ぎまで毎日働いていました。

ところが私は技術を習得するのがとても遅く、その美容室で6年間働いていたのですが、一度も髪の毛を切らせてもらうことはありませんでした。

昔は「見て習え」というのがあって、教えてもらったことを自分の中でうまく整理がつけられなくて、正解がわからない状態になっていました。

特に苦しんだのは人間関係です。

とにかく「私は変わっている」「何を考えているのか分からない」と言われ続けました。

その時代、「みんなと一緒が美学」というような雰囲気があり、私の考えている事・思う事・やる事の全てを受け入れてもらえなくて、相当苦しんだのを覚えています。

最終的に退職するのですが、手が震えてしまいカーラーをぽとっと落としてしまったり、目がかすんでしまうということもありました。

完全に精神的にも肉体的にも病んでしまっていたのだと思います。

そこを救ってくれたのが今の主人でした。主人は1秒も悩まない人です(笑)

「他にも美容室はいっぱいあるから!」と私を連れ出して、彼の出身地である枚方に引っ越し、新しい美容室で働き始めました。

新しい美容室で働き始めて何が変わりましたか?

前の美容室では「違う。違う。ダメだ。」と言われて、「私ダメだな。全然できない」「なかなか切れないんだな」と思っていたのですが、新しい美容室ではすぐにカットさせてもらえるようになりました。

お店の店長が「こうしたら綺麗に切れるから大丈夫やで」「ここはこうしてやってみて」と付きっきりで3か月くらい教えてもらう中で、以前のお店で教わったことがすべて整理できたのです。

整理ができた後は、どんどんカットをさせて頂きました。


カットを始めて私の中でスイッチが入りました。

「何!?この楽しいん!なに!?」

「今までの6年間なに?」

「こんなにカットって楽しいんや!」

って溜まっていた気持ちが爆発しましたね。

今思い起こしてみると前の美容室ではとても苦しい思いをしましたが、練習はとてもたくさんさせて頂きました。

やっていたことは間違っていなかったのだと感じました。

訪問美容室を始めたきっかけについて教えてください。

引っ越し後、結婚・出産を経験しました。

妊娠中にやりたいことを考えている時、訪問美容室という仕事を思いつきました。

しかしいざ出産後仕事に復帰してみると、美容室で働きながら、子どもを1時間かけて保育園まで送り迎えし、夜は授乳のため満足に寝れないという生活が待っていました。

そういった生活を続ける中で、心と身体のバランスを壊してしまい、一か月くらい動けなくなりました。

それでもしばらくは頑張って働いていたのですが、状態は悪化していく一方でした。

「困ったな。困ったな。」と考えている中で、「そうだ!訪問カットならいける!」と思いました。

神様が「早くしろっ」て言って、この状態になっているんじゃないかという風に私は感じました。

お金をかけないように手書きのチラシを作り、徒歩で説明に回ることで、少しずつ遠くに行けるようになり、訪問美容室をスタートすることができました。

             佐藤さんのご家族

どうしてそこまで続けれるのですか?

「才能のある人やすごい人が勝つのではなく、続けた人が勝つ」と思っています。

美容室の先輩・後輩・同期はどんどん辞めていくのですが、私は

「続ける。続ける」

「まだ続ける」

「ずっと続ける」

という気持ちがありました。

また、趣味のない私にとってカットは一番の楽しいことで、他に代わるものはないのです。

カットは美容師十人十色。

その人が経験してきて、その人が見てきたものしか再現できません。

私がいい!きれいだ!と思うものを突き詰めたいと思っています。

夢にうなされるくらい色々なことがあり、私にとっては過去の体験はトラウマな部分もありますが、

「人生で一回は死ぬほど働いた。死ぬほど苦しんだ」

っていう経験があれば、大概のことは続けていけると思います。

独立して訪問美容室を始めて何が変わりましたか?

最近やっと「きたっ!」て感じです。

仕事なのでお金は頂くのですが、それ以上にびっくりするくらい感謝されるんです!

訪問カットはカットするだけじゃないんですよね。

話を聞いてあげること、触れてあげること、一緒に涙を流すこと、一緒に笑うこと、一緒の気持ちになってあげることができます。

その人のもやもやがその日だけでも、ちょっとでも軽くなったらいいかなと思っています。

寄り添いたい」って言うと、とてもおこがましいのですが、「私でよければ」という気持ちがすごく最近は強いです。

                   訪問美容室の様子

訪問美容室をしている中で大切にしていることはありますか?

仕事は家計の為、家族の為、自分の為ということも大切だと思っています。

お店で働いているときはあまり自分の為に働いているとは思っていませんでした。

独立して訪問カットをするようになって、自分の人生がいっきに豊かになりました。

人との縁がとても広がりましたし、応援してもらうことですごく役にたっているんだと自分の存在意義を感じます。

今までの14年間は、とても小さいところで働いてきましたが、今は壁が無い状態で自由に動けています。

佐藤さんにとって仕事とは?

仕事は私にとって生きざまというか「履歴書」のようなものです。

結婚・妊娠・出産もすごいことで、私の人生にかなり変化を与えたのですけども、それが私の人生を作っているのではありません。

仕事をすることによって、自分という人間の「ダメな部分」や「良い部分」が明らかになると思います。

「良い部分」も「悪い部分」も「ドロドロした部分」も含めて、自分という人間性が露呈する。

そういうぐちゃぐちゃなこともあって、でもそれでも毎日続く・・。

仕事をすることによって、前に進んでいるような気になります。

続けていくことで自分が良くなっていっている。

自分という人間が形成されていっているという感覚がすごくあります。

自分の自慢できるものや自信のあるものが一つある方が、人生は歩きやすいじゃないですか。

仕事にしがみついているというか、仕事と一緒に歩くことによって私は生きやすいんです。

仕事をすることによって私は自己表現しやすいんですよ。人と話やすいんですよ。

だからもう、これなくしては自分らしさが出せないんですよ。

これからの夢について教えてもらえますか?

訪問カットをしながら、髪に優しい、頭皮に優しい、身体にも優しいヘナ専門店の店を持ちたいと思っています。

お客さんの髪の毛やその生活をまるっとカバーできるような優しい美容師になりたいです。

ヘナカラーも色々あるのですが、私が使いたいのはインド原産の100%植物性のものです。

自分の店を持った時は、時間も人数も客数も余白を持った状態でやりたいと思っています。

人生余白は大切ですね(笑)

女性専用訪問美容室「バンビ」

URL
https://michiko-works-banbi.com
E-mail
hasami.jyoshi@docomo.ne.jp

訪問美容室とは

病気や怪我・高齢・妊娠中など1人での外出が困難な人達や、家族の介護や乳幼児の育児から目を離せず外出できない人達が使えるサービス。
美容師が訪問して美容室で提供していることと同じサービスを行うこと。

編集後記

佐藤さんと待ち合わせたのは、枚方駅前の喫茶店でした。

訪問美容のカートをガラガラっと押しながら歩く姿に少し驚きました!

そのカートの上には、1冊のノートが載っていました。

おそらく自分のやりたいことがたくさん書いてあるノートだと思います。

「仕事に対する誇りや情熱は、個人の内省からの孤独な戦いから生まれる」という言葉があります。

佐藤さんの美容師への情熱は、まさにカートの上に載っている1冊のノートから生まれるのだろうなと感じました。

佐藤さんの内省から生まれる言葉は、悩んでいる人を元気にしてくれる言葉に溢れていると思います。

「仕事」を「自分の生きる意味」とつなげること。

私自身もなかなかできませんが、できる様になれば本当に幸せだろうなと感じました。

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